多読的リスニング(多聴)について

初稿:2009年5月12日

最終更新日:2009年5月12日

多読的リスニング(多聴)って、なに?

多読三原則 に似た多聴三原則を利用して、耳から入る外国語を楽しみます。
そのために、細部まで理解しようとするのではなく、話の雰囲気や流れを受け取ります。

多読的リスニング(多聴)で、どうなる?

わからないところは無視して、わかるところだけをつなぎながら聞けるようになります。一言で言えば、聞き取れないところに足を引っ張られない図々しさが身について、聞いていることを日本語に直さずに受け取れるようになります。

そうなると(=図々しくなると)外国語をわがままに、好きなように聞けるようになります。

そしていつのまにかわからないところが減って、細部までわかるようになり、聞く楽しみがいよいよ増します。

多読から多読的リスニング(多聴)へ

2001年の11月にSSSの掲示板がはじまってから、たくさんの人が多読を実験してくれました。そして幸いにしてかなりの数の人たちがペーパーバックを楽しむようになりました。この人たちはすばらしい人たちで、わたしがいま持っている多読に関する知識のほとんどは掲示板とメールと全国で開かれた多読仲間の集まり(オフ会)でもらったものです。

そして驚いたことに、おなじ人たちが軽々と多読から音の世界へと歩み出したのです。わたしは以来数年間、その人たちの多聴体験談に耳を傾け、少しずつみなさんの経験した多聴がどういうものなのかわかってきました。それによると多聴はとても多読に似ているようです。そこでわたしは「多聴は多読的リスニングだ」と考えるようになりました。(「多読的リスニング」では長いので、短く呼ぶときは「多聴」とします。)わたしがいま持っている多読的リスニングに関する知識はすべて多読・多聴を実践するみなさんからもらったものです。

多読的リスニングの指針として、一応多聴三原則を考えました。けれどもまだ決まったものではありません。今後二原則になるかもしれないし、四原則になることだってあるでしょう。すべてみなさんの体験談と意見や感想で変わっていきます。

では、「多読的リスニングって、なに?」 の答えを深めるために、多読と対比できる形で説明しましょう。

多読的リスニングは外国語(以下、主に英語を例にします)を聞きながら、日本語に直さずに内容を受け取り、ときには楽しむために、ごくごくやさしいレベルから大量の音を聞きます。(注1)

多読的リスニングを支える三本柱は

  1. 多聴三原則
  2. 聞いて楽しい大量の音声素材
  3. 仲間

です。

また、一つ一つ説明します。

1.多聴三原則

リスニングをむずかしくしていた原因は、聞こえてくる文を文字単位、単語単位ですべて理解しようとする姿勢だったと、いまにして思います。(ディクテーションが流行るのはその悪しき姿勢の故でしょう。)その癖を抜け出して、聞こえてきた文章の内容を吸収するために、多聴三原則を利用します。

多聴三原則とは・・・

  1. 一つ一つの音や語を聞き取ろうとしない
  2. わからないところは飛ばす
  3. 自分に合わないと思ったら、すぐ投げる

 

(1)一つ一つの語を聞き取ろうとしない!

普通は、一つ一つの語を聞き取ろうとしなかったら、外国語が聞き取れるわけがないと考えます。これまでの常識では聞き取れるわけがありませんでした。常識というのは非常に強固な物で、わたし自身、多読三原則を言い出してから、それとそっくりの多聴三原則を言い出すまでに3、4年かかっています。

一つ一つの語は聞き取れなくても、文全体の内容はわかる・・・どうしてそんなことができるのか? 簡単です。「一つ一つの語がわからなくても楽しめる絵本(またはビデオ)」からはじめればいいのです。そして自分でも気づかないほどゆっくりとレベルを上げていけばいい!

一つ一つの語が聞き取れなくてもかまわない方法はもう一つあります。「聞き読み」です。これについては次の項でお話ししましょう。一言で言えば、「聞き読み」はおとなのための「読み聞かせ」と言えます。

こどもたちはたいてい読み聞かせで絵本に触れて、それから多読・多読的リスニングへ移り、そのうち洋書の朗読を楽しむようになります。おとなでもゼロから多読的リスニングをはじめて朗読やDVDやテレビ、ラジオを楽しむようになる人がこれからたくさん出てくるはずです。

そういう素材はたとえば1ページに数語しかない絵本の朗読または読み聞かせや、いやというほど見たアニメの英語音声版や、繰り返し見たビデオや映画(字幕なら多読、音声なら多読的リスニング)や、何度もクリアしたゲームの英語版です。で、具体的にはどういう素材があるかそれは三本柱の「2.大量の聞きやすい音声素材」のところで説明しましょう。

(2)わからない部分は聞かなかったことにする → わかるところだけを聞く!

どんなにやさしい絵本から聞きはじめても、わからない語はあるものです。たとえば 「ゴリ?」としか聞こえない部分がわからなかったらどうするか?

聞かなかったことにします。無視します。飛ばします。考えこんではいけません! 英文を聞いていて、耳に入ってきた語が知らない語だとわかった瞬間、無視して次の語へ注意を向けます。

いや、それよりももっと積極的になりましょう。つまり、聞いているときにはわかるか、わからないかなど考えているヒマはないので、最初から「わかるところだけを聞く」ことにします。

これが最初はなかなかむずかしい・・・ 普通はわからないところがあるとパニックになります。それもそのはずわたしたちは生まれたときからなにかにつけ、「わからないところは全部わかるようにしなさい」と叩き込まれています。まして英語となると、中途半端では許されませんでした。ディクテーションという悪魔のごとき課題もありました。

「聞き取る」という表現も問題がありますね。「すべて聞き取らなければいけない」ような気にさせられます。聞き取れない部分があると、「しまった!」と思って頭が真っ白になります。内容がわからなくなるのも無理はありません。わからないとところはすべて豪快に捨てましょう! つまり・・・

聞き取れない部分は聞かなかったことにします。でも、その部分が文の中で大事な役割を担っていて、知らないために文全体の意味がわからなかったら、どうするか? 多読では戻ったり、辞書を引いたりを禁止しましたが、おなじように、多読的リスニングの場合はプレーヤーを停止したり、戻ったりしないことにします。

多読では「章を飛ばすほどになると、かなり悲劇的な事態に陥ります。たとえば、誰が誰だかわからなくなる、主人公が消えてしまう! そうなったら、多読三原則その三を適用します。」と書きました。そしてこの第三原則はきわめて実行がむずかしいのですが、幸いにしてリスニングの場合は、途中でやめることはあっさりできます。(たいていは眠くなってしまう。)

(2.5)ながら聞き

上の (1)一つ一つの語を聞き取ろうとしない! と (2)わからない部分は聞かなかったことにする を合わせるとながら聞きのすすめになります。

一つ一つの語や、一つ一つの音を聞き取ろうとすると、全体が見えなくなります。(聞こえなくなるのではなく、見えなくなる!)わたしは長い間英語を聞いてきたので、たいていの映画やテレビドラマは全部わかっ(た気になっ)て楽しめますが、それでも一つ一つの音や語を聞き取ろうとするとたちまち話全体はわからなくなります。

  (わたしは「言葉の最小単位は語ではない」と主張していますが、
   それは読むときよりも聞くときにはっきりわかるように思います。
   文字を読むときは一語一語に注目しても全体がわかることがまれにありますが、
   音声を聞くときには一語一語に注目したらまず全体はわかりません。
   逆に、全体はわかるが一語一語はわからないということはごく普通に起こります。)

ながら聞きで英語の吸収が進んだと報告してくれる人はかなりいます。たとえば「抹茶アイス」さんはほとんど常に家事をしながらポータブル・プレーヤーで聞いています。「近眼の独眼龍」さんは多読の前にながら聞きを3年間していたそうです。

多読仲間は「ながら聞き」をどんな風にやっているか、どう考えているか、次のリンクから掲示板を見てください。

多読村掲示板 > 「ながら聞き」について意見募集!
多読村掲示板 > 飛ばして聴く>リスニングのコツ(再掲)

実は、「ながら」は、聞くときだけでなく、言葉の吸収そのものに関わる大事な「姿勢? 態度? 構え?」かもしれません。「ながら」は部分ではなく全体(あるいは言葉ではなく内容)に注目するために必須の「技」かもしれないのです。 「ながら」については別にページを設けてわたしの予想を書くことにします。

(3)自分に合わないと思ったら、投げる!

今の自分にはむずかしすぎると思ったら、そこでその音声素材はやめます・・・ きっぱり、やめます。それを多読的リスニングでは「投げる」といいます。「投げる」の代わりに、「寝る」と言ってもいいかもしれませんが。

ぜひぜひ、これから多読的リスニングにとってもをはじめる方は「投げ技」をいずれ身につけるつもりで!

2.大量の聞きやすい素材

わたしが言いはじめた多読の二つ目の特徴は「だれでもゼロからはじめる」ことでした。多読的リスニングでもおなじことが言えるのではないかと、いま実験中です。うまく行けば、多読と多聴は同時にはじめることができるはずです。それには文字素材と同じくらいたくさんの音声素材が必要です。

けれどもやさしい音声素材はまだ数が少なく、手に入れにくく、値段も張ります。そのため、いまはまだ多読と多読的リスニングを同時にはじめることは少々むずかしいでしょう。 わたしはこのサイトの無料ダウンロードを通じて、あるいは図書館サイトを通じて、「低コスト多読・多聴」の可能性を探っていますが、多読と同じ程度に入手が容易になるにはまだ数年かかりそうです。

したがって、音声素材だけで(多読では文字だけの本に相当)、あるいはやさしい音声の映像素材(多読では絵本に相当)からはじめて、普通の映画を字幕なしで楽しめるようになった・・・というおとなはまだ現れていません。(こどもには何人かいます。なんといってもこどもは読み聞かせしてもらえます!)

ただし朗報があります!

ある程度多読したあとではゼロからはじめなくてもよい場合がかなりあると思われるのです。多読のレベルが上がると厚い本を読むようになります。当然ながら朗読は長くなり、値段も比較的安く思えるものになります。そのうえ本や映画で知っている作品の朗読CDはかなり聞きやすいはずです。たくさんの人に人気のFly Away Home(Penguin Readers 600語レベル)にはCDパックがあります。映画を見てからいきなりCDを聞いてもいいし、聞きながら読んでもいいし、読んでから聞くのもよいでしょう。楽しく聞けるやり方で音声素材を吸収してください。

なお、CDを聞きながら読む「聞き読み」をすれば、「楽に読めるレベル」よりもレベルの高い(したがって時間当たりの単価が安い)音声素材が楽しめる可能性があります。ですから、200語レベルの本を楽しめるようになったら、600語レベルの本をCD付きで購入して、聞き読みしてみてください。楽しめればラッキー--楽しめなかったら後の楽しみに取っておきましょう!

音声素材はどうやって手に入れる?

音声素材、特にゼロからはじめられる素材については情報の蓄積がほとんどありません。けれども多読村の図書館サイトや映画館サイトやCD屋サイトでは少しずつ「耳寄り」情報をアーカイブにしていく予定です。みなさんのさまざまな形のお手伝いをお願いします。

いますぐわかっている音源情報を書いておきます。

音声素材のサンプルが聞ければ選びやすいわけですが、最近はなんとそれが可能になってきました。いずれは多読村村立図書館でそうしたサンプルを聞けるようにしたいと考えていますが、当面は多読用図書を出している各出版社のサイトや、audible.com や、gutenberg.com でちょっとずつ聞いてみましょう。多読用図書のサンプルは コスモピア にたくさんあり、聞き読みができます。児童文学の古典はgutenbergや???がいいでしょう。audible.comでは最新の小説の朗読もサンプルで聞けます。iTunes Storeでも聞けたかもしれませんが、調べがつきませんでした・・・

なんといっても聞き読みに「読み聞かせ」の楽しさを付け加えるのは storylineonline でしょう。まだ20冊ちょっとしかありませんが、ハリウッドの俳優が読み聞かせをしてくれます。絵本の画像もあります。そして文章も字幕のように出したり消したりできます。こんなサイトがほかにもたくさんできるといいのですが・・・

そして BBC Radio 7 のこども番組があります。ニュースから本の朗読、ドラマ、ゲームなど盛りだくさんです。英語国のこども向けですからやさしくはありませんが、いろいろお楽しみがあって、「わからないところを無視」できればだれでも楽しめます。そしてそのうち英語の音に慣れてくるかもしれません。

またおなじBBCの World service にはLeanring Englishというサイトがあって、外国人向けにやさしくしたニュースや特集記事を聴いたり、聞き読みしたりすることができます。

最後に無料音源のご紹介を・・・
tadoku.orgでは「こども式サイト」の時代からオックスフォード大学出版局の協力で Wolf Hillシリーズ、Oxford Reading Tree Robins シリーズ、Snapdragonsシリーズの朗読音源を無料でダウンロードできるようになっています。ぜひサンプルとして聞いてみて、おもしろそうだったらダウンロードしてください。くわしくは 無料音源 のページへ飛んでください。

3.仲間

仲間については「多読」の項とまったくおなじです。そちらを参照してください! 

一言で言えば「仲間は大事」です。

おなじ地域の仲間が集まる「オフ会」に出てもいいし、掲示板で見かけた人のブログに行って、相談してもいいし(掲示板の発言者の名前のあとにブログのアドレスがあれば、クリックするだけで見に行けます。それで、感じがいいな、合いそうだなと思ったら、コメントを書いてみましょう。mixiというもので交流している人たちもいるようですから、それも一つの仲間捜しの手ですね。

でも、どれも敷居が高いと思ったら、掲示板で仲間の存在を確かめるだけでもいいでしょう。
おなじ悩みや喜びを持つ人たちがいること、そうした人たちからおもしろい本の情報をもらうこと--これもやはり仲間を持つことになると思います。たとえ発言はしなくてもね。

いつはじめる?

多読的リスニングも、多読同様、ゼロからはじめられるはずです。「はずです」としかいえないのは、こどもでは読み聞かせから多読へ、そして多読的リスニングへと成長していった例はありますが、読み聞かせしてくれる人のいないおとながゼロからはじめるには素材が手に入りにくいため、実例が少ないのです。

そこで、いまわたしが提案できることは、上に書いたようにある程度多読が進んでから、多読的リスニングに移りましょう、というものです。つまり、多読に慣れて、日本語に直さずに英語のまま読書が楽しめるようになったらはじめるタイミングです。そのころには比較的長い本を読めるようになっていて、音声素材を購入してもそれほど懐は痛まないはずです。それにわたしの経験では、音声素材は何度も繰り返し聞くことが多いので、聞いた語数あたりの単価は本で読む場合の語数単価より安いかもしれません。  

上に書いたような理由で、多読的リスニングをはじめるタイミングは人によってちがいます。いつ買えばいいという目安は立てにくいので、買いたいと思ったら、とにかく買ってしまいましょう。ある程度背伸びして(キリン聞き?)音声素材を買っても、すぐに楽しめる場合があるわけです。いずれは聞いて楽しめるようになるのですから、あこがれの音声素材はできるだけ早く買って、目につくところに飾ることをおすすめします。

いつか楽しめる日を夢見て、Happy 多読的リスニング!